大学卒業後すぐに渡米し、ワシントン州のコミュニティカレッジで1年間学んだ小林沙耶香さん。「大学→就活→就職」というスタンダードな道を捨ててまで、海外で「学ぶ・生活する=留学」にこだわった理由とは?そして帰国後、「英語×ホスピタリティ」をキーワードにたどり着いた今の仕事の魅力とは?そこにたどり着くまでの小林さんの就職活動について聞いた。
2015年 3月 玉川大学リベラルアーツ学部卒業
2015年 6月 アメリカワシントン州にあるGreen River Community Collegeの付属英語コース(ISL)で半年間英語を学ぶ
2016年 1月 Green River Community Collegeで学部聴講スタート
2016年 6月 学部聴講を終了し帰国。留学ジャーナルのキャリアカウンセリングで自己分析から履歴書の書き方、添削、面接の練習まで幅広く指導を受ける
2016年 9月 10社エントリーし、そのうち3社から内定を受ける
2016年 10月 羽田旅客サービス株式会社に入社。羽田空港国際線ターミナルにてコンシェルジュとしての仕事をスタート
大学では就職活動はせず、卒業後すぐに留学するという選択をした小林沙耶香さん。横並びで一斉に仕事探しを始める、いわゆる"新卒生のシューカツ"に強い違和感を覚えていたという。
「大学に入っていろんな分野を学ぶうちにさまざまなことに興味を持ち始め、"グローバルな人間になりたい"という思いが強くなりました。似たような価値観や考え方を持つ人ばかりが集まる日本の環境では、自分の視野は広がらない。海外に出て言語も育った環境も全く異なる人たちと触れ合うことで、人間としての幅を広げたいと思ったんです」。
大学3年次、周囲が就職活動を始める中、小林さんは留学ジャーナルのカウンセリングセンターに通い着々と留学準備を進めた。就職活動もせずに留学することに対して、親はもちろん反対したという。半年間の説得の末、小林さんの熱意に折れる形でその後の進路を尊重、応援してくれるようになった。
留学先で最も大変だったのは、基本的なことからすべて自分でしなければいけないことだったという。例えば、ホストファミリーとコミュニケーションを取ることも、学校で友達を見つけることも、日常の買い物も、バスの乗り方も。日本では何の問題もなく簡単にできていたことすべてを、慣れない英語と格闘しながら自分で解決しなければならなかった。そのことを通して、周囲の人に臆せず話しかける度胸が身に付き、失敗しても何度でもやり直せるというような精神的タフさ、チャレンジ精神が身に付いたと小林さんは話す。
「この経験は今の仕事に活きていると思います。空港には、日本語はもちろん英語も話せない旅行者がたくさんいらっしゃいます。その方たちの意向を汲み取り、問題を解決してあげるのが私たちの仕事です。身振り手振りや絵を描くなどしてなんとか意思疎通を図り解決策を伝える作業は、ある意味、度胸と根気強さが問われます。私も海外では逆の立場だったので、彼らの大変さがわかる。だから、最後までなんとかコミュニケーションを取ろうと諦めずに努力できるんだと思います。留学先での経験は、今の自分の支えになっていると言っても過言ではないかもしれません」。
今の仕事に誇りとやりがいを持って取り組む小林さん。しかし、就職活動当時、この会社が第一希望ではなかったという。
「英語を使ってポスピタリティ関連の仕事に就きたいと就職活動をスタートさせました。当初は、ホテルや空港関連、貿易、英語の先生など幅広く探していましたが、活動するうちに、航空会社のグランドスタッフになりたいと思うようになりました。でも残念ながらエントリーした会社から内定をいただくことはありませんでした」。
希望どおりの就活ができないなか、グランドスタッフにこだわりすぎず、ホテルと空港関連の仕事に選択肢を広げて活動を続けた小林さん。求人の多いホテル業界の就活では、気になるホテルを7、8社リストアップして社風や仕事内容、お給料、休暇の日数などそれぞれの会社の特徴を一覧できる表にして比較検討したという。
「情報があまりにも多かったので、自分でまとめることにしたんです。表に書き出すうちに、自分がこだわるポイントや惹かれる点などがわかってきました。お給料やお休みも大切だけど、自分が大切にしたいのは"とにかく好きなことを仕事にしたい"ということ。好きな仕事を続けるためには会社の社風が自分に合っているかが重要、という視点で会社選びをするようになりました」。
自分の希望と会社を選ぶポイントを整理した小林さんは、就職活動では妥協も大事だ、と語る。
「自分はこれだ、と思っても会社側が選んでくれなければどうしようもない。そこで立ち止まってしまったら何も始まらないんです。結果的に、私の場合は妥協する形でエアポートコンシェルジュの仕事を選びましたが、実際空港で働いてみて自分にはグランドスタッフよりも今のコンシェルジュのほうが合っていると感じています。人が好きでコミュニケーションを取ることに喜びを感じている私にとって、日々の業務の大半がお客様と接する仕事で、お客様のご要望に臨機応変に答えることが求められる今の仕事は、まさに私がやりたかったことだと思います」。
留学についても、1年間という限られた時間では、海外で大学を卒業した人や帰国子女に比べれば到底英語の能力的には及ばない。だからこそ、英語力で勝負するのではなく、留学で困難を乗り越えながら得た積極性やチャレンジ精神、やりたいことに対する熱意や素直さを武器にして就職活動に取り組み、最終的に好きなことを仕事にできた。
「開き直りのスタンス、これって本当に大切だと思います。何事も決めつけず、柔軟に対応していくと、結果的に最善の道が開けてくると思います。また、目の前にあるチャンスは全部つかむ気持ちで取り組むことも大切です。目の前のものを"チャンスだ"と認識するには、まず自分の強みをきちんと把握しておくこと。そのためには、留学中の苦しい体験や落ち込んだエピソードについて、それらとどう向き合い乗り越えたか、その結果自分がどう成長できたかなどを書き留めておくことをお勧めします。そうすることで、自分の向き不向き、強み弱みを理解するヒントになると思います」。
自分の心の声にいつも素直に耳を傾け、時に"スタンダードな道"から外れる勇気をも持ち合わせている小林さん。彼女の柔軟で素直な行動には、帰国後の就職活動を成功させるヒントがたくさんありそうだ。
小林さんのように、大学卒業後すぐに就職せず、留学してから就職活動をする場合は、「既卒」として就職活動をすることになります。「既卒」の就職活動には、「新卒採用枠」での応募と「中途採用枠」での応募の2つのケースがあります。
「新卒採用枠」での応募は、新卒でないと入社の難しい「大手企業」にもチャレンジできるというメリットがあります。最近では、「既卒でも3年以内は新卒扱い」としている企業も増えており、チャレンジしやすくなっていますが、帰国のタイミングによっては、翌4月の入社まで数ヵ月も待たなければならないこともあり注意が必要です。一方、「中途採用枠」での応募は、通年採用で早く働き始められることが多いので、帰国後ブランクなしですぐに働き始めたい人にはおすすめです。
もちろん、同時並行で就職活動を進めることも可能ですが、いずれにせよ、「既卒」での就活は、全て一人でスケジュールを立てて、手探りで求人情報を探し、応募書類を作成し応募するという、「新卒」採用とは異なる孤独なプロセスとなります。よって、「既卒」の就職活動の場合には、自分自身が何をしたいのか、働く上で何を大事にしたいのか、自分の「軸」を明確にした上で、就職活動を進めていく自主性がより求められます。
そのような状況の中、小林さんが「中途採用枠」で満足のいく就職先を選ぶことができたのは、壁にぶつかったり、これでいいのかな?と感じたりした時に、きちんと立ち止まり、自分の気持ちに向き合った上で、自分にとって何が一番いいかをよく考え行動に移してきたからこその成果だといえます。
特に小林さんの、1つの業種に固執せず幅広い可能性を検討する「視野の広さ」と、周りの意見に耳を傾ける「素直さ」は、「既卒」の就職活動を成功に導く鍵になったといえます。
また、就職活動で一番大切な、「自分がどうしたいかを理解し、それを貫く意志の強さ」を小林さんが持っていたことも成功要因として大きかったと思います。これは小林さんにもともと備わっていた資質だと思いますが、自分の意志で「卒業後に留学する」という選択をし、その決断が正しかったという自信をつけて帰国したことが、「強い意志の力」をより強固なものにしてくれたのではないでしょうか。
「既卒」の就職活動は、求人数も少なく不利になると思う人が多いですが、留学ジャーナルでは卒業後に留学し、帰国後に希望する仕事や海外経験を活かす仕事に就職した「既卒」の先輩がたくさんいます。情報の少ない「既卒」の人にこそ、就職活動時にはぜひ留学ジャーナルのキャリアサポートを活用していただきたいと思います。
そういう意味で、小林さんは就職の方向性を決めるためのキャリアコーチングから、応募書類の添削アドバイス、面接対策まで、留学ジャーナルのキャリアサポートサービスを帰国時から継続して積極的に活用されたのもよかったと思います。帰国後に既卒として就職活動をする人は、小林さんのようにさまざまなリソースを積極的に活用し、留学で身につけた力に自信を持って就職活動に臨んでほしいです。